夢を買う

「夢」が存在した時代

多くの若者が、夢を買うというイメージで自動車を買っていた、そんな時代がかつて確かに存在していたんです。今の若者世代からすると全く考えられないことでしょうが。それは何も「自動車」だけじゃないと思うんですけどね。「自動車」はその一番の象徴であっただけなのかもしれません。それがあると、どこへでも行けそうに感じた。若い頃に誰もが感じる閉塞感をぶち破ってくれるように感じた。新しい自分が見つかるような気がした。自分が全く知らない、今まで見たことも想像したこともない、素敵な世界へ導いてくれるような気がした。そういう存在があったからこそ、重苦しい青春時代を乗り越えて大人になっていくことができたような気がする。「自動車」ってただ乗って用事を済ませるだけでは決してなかったんですよね。具体的な場所などどうでもいいことだったんですよ。そういう空気が、すっかり霧が晴れてしまうように時代からなくなってしまったのはいったいいつのころなのでしょうか。それは社会がぺラッとした空気になってしまったと感じる人が多くなった時期と重なるのでしょう。もうあんな時代は決してやってこないと思います。失われたものを取り戻すことほど難しいものはないですから。でも思い出として、それは絶対に忘れてしまいたくないことです。そこには確かに夢が存在していたんですから。